[エッセイ]コーラの飲めない夜は死ぬ思い

2017年2月7日

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私の血液はコーラでできている、と思う。

血管をべたべたの黒い液体が流れている図は、想像に難くない。

私はコーラを愛している。

こういっちゃなんだが、骨も溶けるいけない美味しさである。

お酒や紅茶やココアも好きだけど、いちばん好きな飲み物はと問われたら、

それはコーラであると逡巡することなく答えるだろう。

 

やはりコーラに最も合う食べものといえば、

ピザやハンバーガーになるのだろうか。

ソースヤキソバやお好み焼きとコーラも最強の組み合わせだと思う。あと、チャーハンとコーラ。

から揚げとコーラ。家系ラーメンとコーラ。

でも私は刺し身とコーラも合うと断言してしまうくらいだから、

そのあたりは少々狂ってしまっているかもしれない。

どんな料理にだってコーラさえあればもう満足である。

 

それにしたってあれは危険だ。中毒になる。依存度が非常に高い。

 

真夏の晩だった。

夜だというのに蝉が鳴いていた。時折、ばちんっと街灯に飛びこむ音がした。

暑くてたまらない。あぁ、そうだ、コーラを飲もう。

私は思い立って冷蔵庫を開けた。基本的に我が家には、コーラが数本常備してある。

 

が、その日、あるはずのそこにコーラがなかった。

家族のうちの誰かが、ラスト一缶を飲んでしまったのだ。

あれほど、最後に飲んだ者は責任を持って補充せよと伝えていたはずなのに。

 

くそ。

絶望した。時計を見ると深夜一時半。

一時半か……

私は冷蔵庫の前で頭を抱え、どうすべきか悩んだ。

こんな時間、だけど、飲みたいものは飲みたい。

コーラは一度頭に浮かべると、飲みたくて仕方がなくなってくる。

こんな時間に飲んだら太るぞ、とわかりつつも、正常な判断ができなくなる。

あゝ、あのでろ甘い液体を躰に入れたい。

しゅわ、とした炭酸に咽喉を痛めたい。

冷たい液体が食道を通っていくのを感じたい。

飲み終えて、くあーって言いたい。

考えれば考えるほど、それを欲して我慢ができなくなった。

 

もう、行くしかない。

それはほとんど義務であるかのように立ち上がり、私は時間も関係なく、

ただ二百円だけを握りしめてコーラを買うためだけにコンビニへでかけた。

我慢をして寝るという選択をせずに、わざわざ買いに出かけてしまうという行動をとったとき、私ははじめて中毒を自覚した。

末期だな、と思った。

さすがにもうこんな夜中に買いに行くのはよそう、とビーサンをパカパカいわせながら蒸し暑い風の中で思った。

 

そして翌日、真夜中のコーラ切れという恐ろしい事態に対応する策を思いついた。

普通の冷蔵庫とは別に、中古の小さな冷蔵庫をひとつ購入したのだ。

コーラ専用冷蔵庫。

すぐにコーラの残を確認できるので、これでもう安心である。

一か月に一度、コストコというアメリカ式の巨大スーパーで、業務用のコーラを段ボールで三、四箱買い込んでそこへ仕舞い込む。

圧巻だった。

白い冷蔵庫の中に、赤い缶がずらりと敷き詰められている幸せの光景が広がった。

 

この世の者とは思えないほど興奮していたので、ツイッタ―に、

「やばい幸せ」

と、この素晴らしい光景を映した写真をつけて投稿した。

 

ちょっぴり反響があった。

その、冷静に見るとなかなかクレイジーである光景は、まわり回ってコカコーラ公式アカウントの目にもとまった。

奇跡だ。

 

「こんなにも愛していただき、ありがとうございます!」

という言葉とともに、一気に大勢の消費者の元へリツイートされた。

思いがけないことだったが、こうして私は公式にコーラ好き人間と認めてもらえたのである。

 

コーラ一年分とか、本社から送ってくれないかなぁ、連絡くれないかなぁ、とひそかに期待したがもちろん何事もない。

そういうセコイことは考えないほうがいいのである。

しばらくすると、そんなに好きなんかい、といった引き気味のコメントが目立つようになり、

最終的になんか変な雰囲気になって終了した。

 

そんな今でももちろん冷蔵庫の中は常にコーラで満タンで、

私は只々、コーラを愛している。

数年前、一か月だけ「断コーラ」をしたことがあったのだが、

想像以上に辛くて辛くて人間として終わりかけた。

コーラ解禁の際、歓喜のあまり風呂場でコーラを頭から浴び飲みしたりして、

ひとりでベッタベタになりながらしゅわしゅわパーティーしたのは良い思い出だ。

 

飲み物としては、水よりも大事。

なくなって困るのはコーラ。

コーラのない人生なんて考えられない。

そう思いながら、私は今日もコーラを幸せな思いで味わうのである。

 

さぁコカコーラさん、今回こそよろしくお願いします。

 

エッセイ

Posted by ayapan