映画「たかが世界の終わり」を観たらだいぶ考えさせられている
- 2017.02.15
- 映画

[あらすじ]
12年ぶりに帰郷し、家族と再会する主人公のルイ。彼の目的は、自分の死を家族に伝えることであった。
しかし、久々の再会に胸を躍らせ、幸せな一日を演出しようとする母や妹を前に、なかなかそれを言い出すことができず・・・・・・
2016年カンヌ国際映画祭 審査員賞
99分 カナダ/フランス 2.15現在上映中
自分にとって嬉しいこと、幸せなことがあったら、まずはじめ誰に伝えるだろう。
家族、恋人、友達・・・・・・
嬉しい報告は、自分が信頼していて、大好きな人にこそ一番に話したいと思う。
喜ぶ顔が見たいし、喜んでくれるだろうとわかっているから。
それでは、自分がもうすぐ死ぬとしたら、誰に伝えるか。
きっと、大事な人ほど後回しになってしまうだろう。言わなくてはいけないのはわかっていても、なかなか言い出せないと思う。
辛い思いをさせるとわかっているから。
自分の死を伝えたことで、相手の日常まで壊してしまうかもしれないから。
最後の最後まで、口にするのを躊躇ってしまうだろう。
この映画のすごいところは、じきに死んでしまう主人公の「言いたいけど言えない」と、
久々に彼に会った家族の「知りたいけど聞きたくない」という、
わかりやすくシンプルなテーマだけを中心に物語が進んでいくという点だ。
たった半日の出来事を濃密に抜き出して、どちら側の気持ちも納得させてくれる。
この家族の場合は「12年ぶりの再会」という複雑な関係もポイントだった。
長いこと帰らない選択をさせた理由などの描写は細かく描かれているわけではなく、
過去の回想で明らかにされるわけでもない。
あくまで家族の会話の中だけで読み取っていく。
結局正解は彼ら家族にしかわからないので、そこをあれこれ考えるのが面白かった。
観終わって、友人とご飯を食べ、家についてから再度映画のことを思い返してみた。
疑問点はたくさんあった。
兄の態度について。あの行動にはどういう気持ちが込められていたのか。
家族は彼の死期が近いことを悟っていたのか。あの家庭は崩壊しているのか。
私と同世代の27歳の監督は、この作品で家族のなにを伝えたかったのだろう。
時間が経てば経つほど細部まで思い出して、気が付いて、とじわじわ胸にくる。
見終わった直後よりも今のほうが、よっぽどあの作品を恋しく思っている。
結局自分が死のうが、愛する人が死のうが、いつもと変わらずやっぱり日は暮れる。
たかが一人の人間の世界が終わるだけで、また、明日は何食わぬ顔ではじまる。
これは涙がでるような作品でも、ハラハラする物語でもない。
でも、心のどこかに必ず傷痕を残していくような作品である。
ラストシーン、家族が下した決断をどう感じるかは人それぞれだと思うけれど、
良いか悪いか、好きか嫌いかではなくて、映画を愛するあなたに観てもらって、あなただけの意見を訊いてみたい。
[おすすめシチュエーション]
土曜の夜、暖かくした部屋であったかい毛布をかけながら、ホットワインを飲んで、映画好きの友達ふたりでゆったり観つつ、
終わったあとにあーだこーだ意見交換会を開く◎
久々に真面目な映画感想でした☆