[エッセイ]ヘアスタイルに関する忌まわしき思い出

IMG_5479中学時代、前髪と横に垂れてくる後れ毛が無性にうざったくてしょうがない時期があった。

 

「いっそ坊主にしたい!!!」

が口癖の時期である。経験したことはないだろうか。

 

机に向かって頭を垂れ、シャーペンを握っているとき、こめかみ辺りにさわさわと触れる後れ毛や、

やけに気になる伸ばしかけの前髪の気持ち悪さ・・・・・・

 

ピンでとめてもダメだった。

ショートできのこヘアにしていた私は、毛量が多いからだろうか、そしてピンを止めるのが恐ろしく下手だからだろうか、

ピンごと垂れ下がってくる。

しかも、きっちり止めると跡がつくし。

カチューシャで前髪を上げるのも、ずっとつけてると頭が痛くなってくるし・・・

 

あと、前髪にとめるこういうやつ。

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キラキラ女子とかちょっとギャルっぽい子がやってるイメージがあって憧れはあったのだが、なんか端が視界に入るし、重たいし、

だいたい私がやってもなんか違う。

 

いっそ全剃りしてぇ・・・・・・

このままではいつバリカンを握るかわからないという狂気・・・・・・私の我慢はもう限界だった。

 

 

そんな、ある朝のことである。

日課のようにドライヤーやコテを駆使しながら鏡の前で前髪のうざったさと格闘していたところ、

母が背後からなかなか大きめなスプレーを持ってやってきた。

 

「これで、前髪固めちゃえばいいんじゃない?」

 

すかさず父親も登場する。

 

「ほら、ワックスもあるぞ」

 

そっ、と男性用ハードワックスを差し出してくれる。

 

え、と戸惑う間もなく、二人は盛り上がる。

 

そうだよ、そんなにうざったいなら髪の毛が落ちてこないように固めちゃえばいいんだよ!!

 

そうだそうだと言う二人を前に、私もなんとなく、そうか、と言う気になって、

まずワックスで前髪と横髪を後ろに撫で上げる。

 

ゴキブリのそれの如くテカッとするのが若干気にはなるが、いい感じに視界が広がり、髪の毛は額にもかからない。

 

これはいいぞ、と調子に乗った私はその状態をキープするべく、

夢中で脳天を中心にハードスプレーをかけた。

 

バリバリに固まる。触ってみると、ガリ、と髪の毛が大きな束になっているのが判った。

洗わずに放置しておいた習字の筆のようにバリバリである。

鏡越しに目が合う。

両親は満足そうに拍手をした。

 

「すごい・・・かっこいい・・・かっこいいよ!!

いいじゃん、全然そっちのほうがいいよ!」

 

そうかな。

・・・そうなのかも。

 

のせられやすい私はせっかくの髪型が崩れないようにそっと制服に着替え、意気揚々と学校へ向かった。

これで前髪や横髪との苦悩の日々ともおさらばだ。

このときまでは、本気でそう思っていた。

 

爽やかな風にも一切靡かず、微動だにしない髪の毛に、興奮しながら歩いていると、

駅で待ち合わせをしていた友人が、出会いがしらに指をさして噴き出した。

 

「なにその頭」

 

爆笑されて、学校に着くまでずっと笑われた。
一度落ち着いて普通に話していても、ふいに思い出したように噴き出された。

 

「え、おかしい?」

 

「おかしくないわけないじゃんwww」

 

登校中笑われたことで先ほどまでの自信を失った私が恐る恐る教室に入ると、

クラスメイトが全員私の髪型を見てまず、ギャー――っと叫んだ。

女子校の生徒の叫びはほんとに地割れするレベルの迫力である。

 

「どうしたのその髪の毛!!」

「髪の毛カリッカリなんですけど!!!www」

「ホストなの?ツッパリなの?どこ目指してんの?ww」

 

完全におかしなリーゼントヘアーになった私の頭を、みんな面白がって触りまくる。

先生にも、頭どうしたんですか、と二重の意味にもとれる質問をされた。

その日以来、私のあだ名はしばらく夜王になった。

 

人に触られまくっても尚カリカリを維持したハードな髪型のまま帰宅し、

顔を見るなり両親に猛抗議した。

 

「ちょっと!夜王ってあだ名になったんだけど!!!」

 

「え~かっこいいのに~」

 

だいたい、女子中学生にそういった類のかっこよさを求める時点でどうかしている。

 

翌朝も鏡の前にスプレーとワックスが用意されていたがガン無視した。

それから私はもう、両親の「いいじゃん!」という言葉は信じないことに決めたのである。

 

 

 

夜王とは種類が異なるが、小学生の頃もちょっとイカれた髪型で学校に通っていたことがあった。

 

ドレッドである。

 

あれはまぁ、当時レゲェにすごくハマっていて、

私が母親に「やってくれ」と頼んだのが悪いのだが。

 

腰パンにチェーンをして、男物のだぼだぼパーカーを着用。

学年一早くランドセルを卒業し、でかい斜め掛けリュックで粋がっていた、

人生史上最もファンキーな第一暗黒期である。あんな小学生かわいくない。

 

ちゃんとしたドレッドだと毎日髪の毛を洗えなくなるので、

30本から40本の編み込みを毎朝母に手伝ってもらって作りこんでいた。

 

面倒になると次第に本数は減った。

 

私の卒アルも一応その自己流ドレッドで写っているのだが、
卒業時には面倒くささがピークを迎えて数十本の小規模ドレッドになっていた。

同級生からは毎日本数を数えられるのが日課だった。これもまた思い出である。

 

 

髪型で見た目の8割は決まる。

雰囲気イケメンも雰囲気可愛い子も、髪型が可愛くて洗練されているからこそそう見えるわけで、

逆にいうと髪型が決まっていないとその時点でアウトだ。

 

美容師がこぞって素敵に見えるのも、髪型で失敗していないからであろう。

 

髪を乾かすのがめんどくさい、

毎日コテ使うのがめんどくさいなど、

様々な要因から発生する「いったん、ハゲにしたい欲」とは今でも定期的に戦ってはいるが、

もし万が一、私が

「本気で坊主にしたい」

と言い出したとしても全力でとめてほしい。

 

たぶん悪魔のような両親に「坊主も似合うよ!」とかそそのかされて、

信じないとは言いつつもまた気持ちが揺れてしまうかもしれないので、

冷静な周りの皆様に、「絶対やめとけ」と言っていただくことが、私の坊主回避のための残された道である。

 

エッセイ

Posted by ayapan