[エッセイ]新入生歓迎会にて対象者の話を聞きだせ!

 

探偵という仕事についている場合

 

「合コンでは自分が探偵ということを明かしてはならない」

 

というのはよくある話。

 

某小さな探偵さんのようにバレると命を狙われる壮大な事情があるわけではありません。

ただ、探偵だというと・・・

 

話がそれで終了するからwww

 

「えー!尾行とかやってんの?」

「不倫調査が一番多いんでしょ?」

「今までの調査でどんなのがあった??」

 

だいたいこの質問がされる。

そして、仕事の話だけで終わる。

だから合コンに限らず初対面ではあまり話したくないのです笑

 

すごい虚しい。

いや、いいんすよ、興味が湧くのは。たしかに知り合いに探偵がどんな仕事なのか訊いてみたいもの。

でも、そこしかないんかい、という気持ちになる。

 

なので以前、街コンに行ったときは

「紅茶店の店員をしてます♪」と嘘つきました。

名前も偽名で・・・・・・(果たしてなにしに行ったのか)

まぁ自分を偽るのは得意なのです笑

 

 

さて。

それでは今回は自分を偽りまくる仕事・・・

潜入調査について書いていこうと思います。

 

なかでも特に印象深かった潜入調査のお話。

ミッションとしては

「大学の新入生歓迎会にて対象者の話を聞きだせ!」

みたいな感じです。

 

 

某大学の新入生歓迎会に潜入し、

大学3年生の対象者の顔を撮影し、さらに対象者と接近して情報を聞き出すというのが調査目的。

 

孫の素行調査ということでおばあちゃまからの依頼でした。

 

こういうのすごくよくあります。

 

離婚して妻側に親権が渡ってしまった、旦那側の家族が

孫の撮影を依頼してくるパターン。

旦那とは会わせない、みたいな協定が結ばれたとしても、

やはり孫の顔は見たいですもんね・・・

 

当時、私は25歳でしたが、

童顔なのでいけるだろうということで新入生18歳のふりをして、

インカレとして他大も受け入れている某サークルの新入生歓迎会に参加したのでした。

そこで対象者と接近して仲良くなろうという魂胆。

いや、にしても7歳下の子と喋れるのか・・・?

というか7歳もサバ読んだとして、さすがにジェネレーションギャップでバレるんじゃ・・・・・・

という不安はかなりありました。

 

私の場合、潜入調査をする前は綿密に人物設定を考えてから行きます。

 

そのとき考えた設定は

「静岡から出てきて一人暮らしをはじめたばかりの18歳。

とはいえ静岡が実家というわけではなく、親が転勤族なため、一年間だけ静岡にいた。よって土地勘はない。

6つ離れた姉がいる。

東洋大学の文学部。YUKIに憧れている。好きな映画はジブリ」

 

 

こんな感じでゆるふわ女子大生の設定を作っていきます。

ちょいださめのクルミボタンがついたロングスカートに、大学生が好みそうなリュック姿。

先輩たちを前におどおどした態度で、でも若々しくかわいい感じで、

「そうなんですよぉ、頑張りますぅ」みたいに、語尾が伸びるような女の子を演じる。

 

飲み会会場へ向かう道すがら、同い年だね、といって女の子が声をかけてきました。

先ほどの設定通りに話をします。

すると、一年先輩の女性も話に加わってきたのです。つまり私の5、6つ下。

サラサラロングヘアの、帰国子女っぽい気の強そうな奇麗な子でした。

 

「わたしね、明日で二十歳の誕生日なんだー」

 

「そうなんですね!おめでとうございます!」

 

「ありがとー。でもさ、二十歳になるとなんかもう、人生終わりって感じするわ―

 

思わず、顔が歪みそうになるのを抑える。

このすごい発言によって、大量の女性を敵に回したぞこの子。

もちろん目の前の私も。

 

「そ、そういうものですか」

 

「そうだよー。なんかもう終わりだよー。若くないしさー」

 

若くない?

二十歳が・・・?

 

いきなり心をえぐられた私は、彼女の「若くない理論」を散々聞きながら、

カラ元気で会場へ向かいます。

 

 

歓迎会の為、貸切のカフェバーに到着。

現場写真は報告書に載せるときに必要なので

入口の写真と看板はバシバシ写真に収め、

首からぶら下げたスマホで動画を撮影しておく。

 

「めっちゃ写真撮るねw」

と言われたけど、最近の女子なんてだいたいそんなもんなので楽です。

「インスタにあげるんでぇ」

とでも言っておけばなんとかなる。笑

 

会場にはたくさん料理とお酒がセットされていて、

仕事ということを忘れすっかり食べる気満々、飲む気満々の調査員稲葉。

 

「みんななに飲むー? あ、未成年は酒なしね!」

 

「あ!私ビー・・・」

 

思いっきりビールを頼もうとして慌てて

「びーーーーぃいいいあああオレンジジュースで!」

とごまかす。

 

「どうしたのw 急にテンションおかしくない?ww」

「えー、そうですかぁ?オレンジジュース好きなんでぇ」

 

ごまかしきれたかは謎だが、なんとかオレンジジュースを頼みます。

 

ちょくちょく席を外し外に出で、定期的に事務所と連絡を取ります。

とはいえ、

「マルタイまだ現れません。友人らしき人物の顔面は押さえました」

こんなスパイっぽいこと話してるの聞かれたら一巻の終わりですね。笑

 

戻って、対象者と同じ21歳大学3年の男の子たちと同じ席につきます。

はたから見ると、新入生なのにひとりでガンガン上級生と絡んでいく積極的な女子です。

 

私は鞄に仕込んだカメラを起動し、この場にはいない対象者の話を聞きだす。

もちろん録音機材もセット。

胸ポケットにはペン型カメラで、もうばっちりな状態。

あとは話を誘導していくだけです。

IMG_5882

 

「3年生の先輩って何人くらいいるんですかぁ?」

 

「俺らと、あと5人くらいかな」

 

「そうなんですね。なんか3年生の方々って大人っぽくていいですよね」

 

あーそう?

と明らかに嬉しそうなやつら。

そして調子に乗ってこいつらはこんなことを言う。

 

「いや、俺らくらいの歳になるとビールもうまく感じられてさ、もうおっさんだなって思うんだよね(笑)」

 

おっさん。

21の若者がおっさん。

 

年上の女の前ですごく恥ずかしいこと言ってるこの子たち。笑

 

と思いながらも、私も当時、24歳で「もうおばさんだからなー笑」とか友達同士で言ってたので、

急にすごくダサいことのように感じて、即座に辞めようとおもった。

年上からみるとすごく「何言ってんの」感があるんだね・・・・・・反省。

 

まぁ彼らはまさかそんな話してる相手が年上だとは思っていないだろうが。

 

無理やり会話をこの場にいない他の3年生の話題に移し、

さりげなく対象者の話を聞きだすことに成功。

話題は恐れていたジェネレーションギャップの話に・・・・・・

しかし私は対象者の話題を聞き出すミッションを完了したことによってだいぶリラックスしていた。

迂闊だった。

 

「18歳か、つい最近までJKだったんだ。まだ若いもんなー。笑

あ、じゃーさ、ポケモンのゲームは何の世代?」

 

「んーと、赤ですかね」

 

「!!!???」

 

しまったやばい、と気づいたときにはみんな食いついていた。

赤・緑といえば私が小学1年生のときに販売された最初のポケモンで、

彼らの世代でもない。

本当の18歳は生まれてもいない。

 

でも一体、なにが正解なのかわからない。

 

ルビー?サファイヤ?

私より7つ下の世代なんてわかるか。

 

 

「あ、あれです、姉がやっててよく借りてやっていたので・・・

だいぶ古いですよねー!」

 

「あ、そうなの?びっくりしたー!」

 

危ない危ない。

思いっきりバレるところだった。

(むしろよくこれでバレなかったな)

 

長時間に及ぶ調査で顔に疲れが出てきた頃、

「なんか大人っぽいよね」

と言われはじめ、そろそろ限界か、と途中退席をした。

ぼろが完全に出始める前に、ひっそり500円を置いて事務所に戻った。

 

結果として対象者は会場に現れなかったが、

周りの友達から話を聞けたのでとりあえず成功ということで一旦調査は終了。

 

にしても罪のない可愛い可愛い学生さんたちをたくさん騙してしまって、ほんとに申し訳ないことをした。

一番悲しいのは、同じ18歳ということでその日一日仲良くしていた女の子。

「一緒にこのサークル入ろうよー!」

と言われた約束、守れなくてごめんね。

 

そんな感じで潜入調査は、

周りと仲良くなることによって信頼を得られ、やりやすくはなるのですが、

その分、もう一生会えないと思うと寂しさを伴う仕事です。

 

すごい人見知りだった私でも人見知りが治ったので、

その点はよかったかなと思うけれど。

 

意外と探偵ってその辺にごろごろいるもんです。

そして、ほぼ全員が「まさか探偵が混ざっているわけがない」と思っているから、

すごく調査しやすいんですね。変な聞き方をしても、「ん?」と思うだけで答えてくれる。

 

にしてもこの調査に関しては、改めて文章にすると結構ヘマしてましたね笑

さすがへっぽこ探偵な私です。。

 

 

エッセイ

Posted by ayapan