[エッセイ]なぜか戦慄迷宮でゾンビをやることになったときのお話

IMG_6958

私は人生において「ノリ」と「勢い」を大事にしている。

チャンスは逃したらもう一度手に入れられるかわからないし、

興味があったらとにかくなんでもやってみる!というのが私のモットーだ。

 

中でも我ながらフットワーク軽いなぁと思ったのは、一昨年の夏のこと。

 

「深夜2時にゾンビ役で人を追いかけてもらえない?」

という仕事の依頼に、ふたつ返事でオッケーしてしまったときである。

 

 

 

探偵事務所に勤めてそろそろ3年が経つという頃、

仕事にも慣れてしまったし新しいことをしたいなということで、

流浪の私は密かに転職活動をはじめていた。(仕事中ですけど)

 

大学時代に着きたい職業としてあげていたものはこちらである。

・月刊ムーの記者
・東スポの記者
・刑務官
・ロックバーのバーテン
・呪いのビデオ制作委員会のAD
・探偵
・精神科クリニック

(下二つは叶えることになったが、このラインナップを就活時に本気で考えていたというのは、我ながらアホだなぁと思う)

 

そんな中、私が新たに目をつけたのが、

「お化け屋敷を創る会社」

 

そんな会社があるんだ、というのも驚きだったが、

ホラーなことを考えるのが好きだったしゾンビ仮装するのは大好きだから、一度お化け屋敷というものに携わってみたい欲はあった。

とにかく善は急げでその会社のページにメールをしてみる。

すると、5分後くらいには代表の男の人からフェイスブック伝いで連絡がきた。

 

「ゾンビ好きなの?」

「はい!大好きです!」

 

(なんだか探偵社に入社したときと同じ匂いがするが、私はこんな感じでないと会社に就職できないのかもしれない)

 

やりとりをいくつかした後、

彼が唐突に

「あ、そうだ。ゾンビ役やる自信ある?」

と訊いてきた。

 

ゾンビの仮装は好きだが、自信があるかと言われればまた別の話だ。

しかし、ここは「自信があります」と答えなくてはならない場面である。

 

「もちろん!」

「実はお化け屋敷を貸し切って、ゾンビの企画やるんだけど、

ゾンビ役の子が足りなくて。参加してもらえないかな」

 

簡単に内容を伺った。

 

マックスむらいというユーチューバ―がお化け屋敷に一日寝泊りするという企画をおこない、

それがニコニコ生放送で放送されるのだという。

そこで様々なホラーイベントが起こるのだが、ゾンビ役として驚かす人間が足りないのだと。

 

 

もんのすごい急展開。。

とは思ったが、

急展開は私の大好物である。

 

気づいたら「行きます!自信あります!」と返事をしていた。

 

人生、なるようになる。

やってみなきゃわからないし。

 

ということで、私は「ちょっと用事が」と会社を早退し、

すぐさま撮影の方に向かった。

こういうときにすぐに帰宅できるのが、嘘みたいにゆるい探偵社ならではである。

 

 

職場から直行で表参道へ行き、撮影陣と待ち合わせ。

お化け屋敷会社の代表を務める彼の姿は、さすが、奇抜すぎてすぐに分かった。

 

全身黒。

夜だというのにサングラスをかけて、黒いハット。黒の革手袋。

腰にはドクロのアクセサリー。

 

年齢は50歳くらいか。

背も高いし躰はでかいし、もうバリバリ目立っている、というか浮いてる。

さすが、ホラー業界で有名なだけある。

 

 

挨拶もそこそこに、移動しながら今回の企画の流れを話され、
帰宅ラッシュで大混雑の山手線に乗り込む。

「あまり時間がないから、電車内だけどここでゾンビのレクチャーするね」

 

え、ここで?

と思う間もなく、ゾンビレクチャーが開始する。

 

彼はウォーキングデッドシリーズの監督と会ってゾンビについて語り合ったこともあるそうで、

その監督から習ったというゾンビなりきりのポイントをレクチャーしてもらう。

うさんくさいと思うかもしれないが、ほんとに本気で、すごい人だった。

 

「黒目を限界まで上に向けて、鼻の奥から声を絞りだすんだ。

躰は、右手を挙げていたら左手は下げる、みたいにアシンメトリーにする。こんな感じで」

彼は恥ずかし気もなくやってのける。

 

「さぁ、やってごらん」

 

(く・・・狂ってる・・・・・・)

 

そうは思いながらも、

ゾンビは恥ずかしいという心はないから、そういう入社試験かもしれないんだな。

と考え直し、私は電車内でしっかりゾンビになりきった。

電車内に変態ふたり。

完全に奇異な物をみるような冷めた視線を感じながらゾンビの練習をする。

 

・・・・・・もう、恥ずかしいことなどなにもない。

私はここで一皮むけたと思う。

 

 

駅にはロケバスが待っていた。

来ていたのはニコ動の社員と、撮影スタッフ2人。

それから怪談師の女の人と(そういうジャンルがあるのはじめて知った)、別のゾンビ役の女の人だった。

 

車内でもインタビューなどが行われ、そうこうしているうちに着いたのは、富士急ハイランド。

営業終了している遊園地というのはなんとも不気味だが、

めっちゃテンションあがる!!!

 

こんな機会そうそうないし、これだけでも来てよかったと思える。

貴重な体験ができそうな予感に胸が高鳴る。

 

そして富士急ハイランド内で有名なお化け屋敷、

「戦慄迷宮」

夜中のお化け屋敷はだいぶ迫力がある。
中ではもうすでに撮影が行われているらしい。時々叫び声が聞こえるのが更に恐怖をかきたてる。

 

裏口から入場し、控室に通される。

そこはお化けの待合い室。

「いらっしゃーい」

とゾンビメイクをしている、戦慄迷宮専属バイトの兄ちゃんたちが明るく出迎えてくれた。

お化けのお面や衣装、そしてメイク道具がずらっと並んでおり、

そこで私も社長にゾンビメイクをしてもらう。

 

社長は特殊メイクアップアーティストとしても活躍されている人だ。
時間もないので簡単にメイクを施していく。

 

完成したのがこちら。

IMG_5880

カラコンを忘れたので、私は常に白目でいるよう命じられた。

かなりきつい。

ただの変顔である。

 

結局、ゾンビ役なんていっぱいいるから安心だと思っていた動画撮影も、

なぜか、ゾンビ役は私ひとり

 

話が違う、荷が重すぎる、とぶつぶつ言いながらも、

一人きりで戦慄迷宮のセット内で待ち伏せる。

 

驚かす対象者が近づいてくる音がして、
「こうなりゃヤケクソだー!」とばかりに私はすかさず変な呻り声をあげて飛び出した。

人をこうやって驚かすのは人生で初めてだ。
自分を観て男の人が恐怖を感じている、という状況が楽しくて仕方がなかった。
電車内の恥さらしレクチャーも役に立った。

なかなかいい動きで相手を驚かすことができて悲鳴をいただき、
ニコ生でもいいコメントをたくさんもらえてウハウハになる私。

 

探偵やめて、ゾンビとしても食っていけるのかな?と調子に乗った。

 

結局その代表もすごくいい人で仲良くなり、「僕の助手ね」と言われるまでになったのだけど、
仕事としては日本各地へお化け屋敷の巡業をしなくちゃいけないのでやめておいた。

それに冷静に考えて、
「新卒で探偵社に入社したのち、ゾンビに転職する」
っていうプロフィールはさすがにシュールすぎる。

 

 

昼まで普通に仕事していたというのに、人生とはなにがおこるかわからない。
一通のメールから、その日の夜中にはゾンビ役として戦慄迷宮内で潜むことになるなんて思いもしなかった。

タイミングってあるし、ちょっと躊躇していたら今回みたいなことはもう二度となかったんだなと思うと、やっぱり面白いことをするのに勢いって大事だと、改めて思った一件でした。

 

とはいえ、私のようにノリで飛び込んでも、もしかしたら危ない目に遭うかもしれないのでお気をつけて!笑

エッセイ

Posted by ayapan