[エッセイ]微妙な友達との接し方がわからない

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土曜の夜、何も考えなくてもいいようなバカっぽい映画でも借りて、
高カロリーなお菓子
――それは例えばポテトチップスやアーモンドチョコの類の――
を、もりもり食べながら、愛するコーラを飲み、
自宅でゆっくり過ごそうと思い地元のTUTAYAに寄った。

うきうきしながら映画を選んでいた。

 

「俺たちフィギュアスケーター」にしようかな。
もう死ぬほど見たけど見るたび興奮する「キングスマン」もありだ。
それともムカデ人間2にするか?

そうやってDVDを選ぶひと時はこの上なく楽しい。

 

しばらくして、ゾンビ系も漁るためホラーコーナーに移動しようとしたとき、
棚の向こう側に若い女性の姿をみとめた。

 

その顔には見覚えがあった。
あまりじっくり見たわけではなかったが、それでもそうだと確信して、
私は思わずバッと視線を逸らし、柱に身を隠した。
彼女の動向を棚の隙間から確認し、反対方向へ逃げる。

 

(あれは、たぶん、小学校のときの同級生・・・・・・)

 

生まれ育った地元に暮らしていると、たまにこういうことがあるのだ。
ふいに幼馴染に会う状況。
別に彼女となにか気まずい過去があるわけでも、嫌いなわけでもない。
むしろ小学生時代はわりと仲がよく、放課後も二人でよく遊んでいたというのに。

探偵をして様々な調査をしてきたことも、深夜のお化け屋敷でゾンビ役をやったことも、
すべての経験はここでは関係ない。

 

なぜなら私は初対面には強いが、微妙な知り合いに弱いタイプの人見知りだからだ。

 

数十年ぶりに出会って、私は立ち話どころか挨拶すらできなくなっている。
こそこそ棚の奥に隠れて、相手の様子を伺う怪しい私は、
「あ、久しぶり~元気~?」
から先の言葉を見つけるのに大げさでもなんでもなく、あと数年はかかりそうだった。

 

 

その子を、S子ちゃんとする。
S子ちゃんは細見で背が小さくて、外国人のようにくりくりした目で、顔の整った可愛い女の子だった。
しかしながら小学生にありがちな
「男子、ちゃんと歌ってよね!」と合唱を強制する系女子だったため、もったいないことに男子からの人気はまるでない。
うるせー、と言われて本気でうざがられるだけだった。

ちなみに私も男子と同じように掃除をさぼってトイレに立てこもったり、
校歌を真剣に歌うのかっこわりぃ、と思って口パクで歌うようなスカしたタイプのだらけた小学生だったためS子ちゃんからよく叱られていた。

それでも小学1年生から4年生まで同じクラスで仲は良かった。
休み時間はいつもふたりで遊んでいた。
例えるならば、まることたまちゃんみたいな感じだった。

 

しかし私たちふたりの遊びは、はたからみると異様だったと思う。

 

校庭のど真ん中に二人でしゃがみこみ、周りに飛び交うボールやら、
走り回る子供たちに当たらないように気をつけながら、小さな穴を掘る。

一心不乱に無駄なことをしたくてたまらないということ、経験ないだろうか?

何が楽しかったのか、今となってはさっぱり覚えていないが、
一輪車で走り回る人々に散々邪魔だと言われても、「なにやってんの?」とクラスメイトに妙な顔をされても、
にやにや笑いながら、ただひたすらに蟻の巣みたいな穴を木の枝を掘っていた。

 

当時の自分に忠告したくて仕方がない。
「不思議ちゃんも度が過ぎると気持ち悪いよ」

 

それからしばらくし、私は当時流行っていたパラパラという現代ダンスに興じるようになり、
彼女との穴掘りの時間はなくなった。

以降、私はどんどんファンキーになった。

背の高い男子一名と、背の高い女子一名を引き連れて、私たち三人はよく廊下でパラパラを踊った。
背の高い男子のほうは、頭がよいお坊ちゃんで、背の丈に合わないパンツみたいな短パンを履いており、
背の高い女子のほうは、「太眉は私のポリシー!」とでもいうようにいつもそれを指先で撫で、高すぎる位置でふたつに髪を結っていた。
私はそんな二人を従えて創作ダンスを教えていた。
妙なメンツだったが不思議と仲は良かった。
そんな私を、S子ちゃんは特に一緒に踊るでもなく優しく見守っていてくれた。

 

しばらくしてパラパラにも飽きた。
ブームが去るのは早い。
そのブームが去るのと同時にクラス替えが行われ、
S子ちゃんとは離れ離れになってしまった。

卒業後はほとんど会うこともなく、
そして――
TUTAYAに至ると、そういうわけである。

 

息をひそめて彼女を帰り際まで見送っていた私は完全にストーカーのようだったけれど、
やはりこの年齢になっても
むかしの知り合いや、一度どこかで会って顔は知っているというような、微妙な関係の人間ほど声をかけられない。

 

相手が私を覚えていなかったら?
華麗にスル―されてしまったら?

 

悲劇なんてもんじゃない。
私は会った人の顔は忘れたくても忘れられないのだけれど、
相手は私なんかのことを覚えているとは限らないのだ。

自分の存在感が、自分が思っている以上にないという現実を突き付けられることは、
やはり辛いし結構恥ずかしい。自分はしっかり覚えているだけに悲しい。

と・・・・・・
まぁスル―されることは恐ろしいが、真の恐怖は、
話掛けてしまって、そのあと気まずい感じになってしまったときにこそ訪れる。

「元気だった~?」

「元気だよ~!そっちは?」

「うん元気~!」

元気という、どうでもいいワードをハイスピードで投げ合うだけの会話しか思いつかず、笑顔を貼りつけたまま一旦沈黙したあと、
「えっと、、それじゃあね!」
みたいなぬるっとした空気の中で別れることになるに違いない。

そして別れた後、まだ彼女が店内にいるTUTAYAを堂々とうろうろすることなどできず、そそくさと店を去り、
私はムカデ人間2も借りられずに寂しく土曜の夜を迎えるのだ・・・・・・

もしそうなってしまったら、声かけないほうがお互いのためだったのでは?と思ってしまう。
だから私は棚の奥に隠れてしまうのだ。

 

 

・見知らぬ人間と二人きりで腰を据えて2時間話す
・見知らぬ人間と10分立ち話

上記のうちどちかをしなければならないのであれば、
私は迷わず前者「見知らぬ人間と二人きりで腰を据えて2時間話す」方を選ぶだろう。

 

つまり、軽く話すということができないというわけである。
「いいお天気ですね」
という話で10分持たせられないし、
かといって「趣味はなんですか?」なんて話を振ったところで、たった10分では話が微妙なところで途切れるかもしれない。10分という限られた短い時間の中で何を話せばよいのか、正解が導き出せない。

 

How are youに対する返事に、
「元気です。あなたは?」
という回答しか習っていない私は、その続きの台詞が知りたくて仕方がないのだ。

できれば1分くらいうまいこと立ち話をして爽やかに「では失敬」と去っていけるようなちょうどいい定型文があれば、だれか私に教えてください。

 

エッセイ

Posted by ayapan