[映画]ベイビー・ドライバー

 

 

ベイビー

[あらすじ]
天才的なドライブテクニックをもつベイビーは、犯罪組織のボスに弱みを握られ銀行強盗の逃がしやとして活躍しているが、そのテクニックを発揮するためには絶対に必要な道具があった。
ipodに入った音楽だ。
子供の頃に遭った交通事故の後遺症として耳鳴りに悩まされていた彼は、音楽を聴くことでその耳鳴りから解放され、最高にクレイジーなドライバーへと豹変する。
活躍していた彼だったが、ある日ウェイトレスの女の子と恋に落ち、それによって犯罪組織からは足を洗おうと誓うのだが・・・
113分 イギリス/アメリカ

 

 

 

音楽は人生を彩るものだと思う。

 

私自身、楽器を弾くことはできないただの聴き専だけど、
音楽は日常の中に欠かせない存在だ。

 

朝は必ずテレビよりも音楽をつけて、通勤中はもちろん、職場でも出勤したらまず最初に音楽を流す。
家で料理をしながら聴き、お風呂に入りながら流し、寝る前に大好きなレコードをかける。

 

と、自分で書いてて引くくらい音楽が日常にないと生きていけない。

 

 

音楽を聴いていると、その音楽に似合う自分に気持ちが変化していくのを感じるから面白い。

例えば私の場合、
ニルヴァーナを聴いていると、ちょっと気怠いギター少年の気分で街を歩くことができるし、
ジャニスイアンを聴いていると自分が爽やかな少女になったかのような錯覚を覚える。

 

周りの音を遮断して音楽の中に入っていくとテンションがぐぅんと上昇し、自分がミュージカルの主人公にでもなったようになんだか世界が違って見える。

そういう瞬間は誰でも経験があると思う。

 

そんな音楽の一番楽しい瞬間――そこを映画で表現したのがこの「ベイビードライバー」だ。

 

今まで私は「LALALAND」「シングストリート」などの音楽をメインにおいた映画のレビューを書いてきたけれど、それらは音楽をやる側の物語だった。
あくまで、アーティスト目線の音楽映画。

 

ベイビードライバーは私のような聴き専が主役なのだ。

最高の音楽を聴きながらドライブをするという、あまりにも普通すぎる夢をもった一見どこにでもいるような普通の男が主役。

ただし、彼はドライビングテクニックが天才的であるということによって、また少し人生が狂ってしまうのだけど。

 

音楽を聴きながら運転するとたちまち天才的なドライバーになる彼は、弱みを握られて銀行強盗の組織に雇われる。

凶悪な犯罪に巻き込まれながらも、日常や愛する人を守るために必死で案件をこなしていくのだが、まぁ映画の内容は音楽が深く関わっていること以外は、楽しいカーチェイスシーンに、色を添える純愛など、よくあるクライムアクションだ。

 

だけど往年のクライム系、スパイ系アクションなどとの違いは、
主人公の不思議な魅力と、運の良さ。
なんとなく運がよくて回避できたり、さりげなくうまくいくシーンがあって、図らずも飄々とこなしていく雰囲気は現代らしい新しいヒーロー像だなと思った。

 

心優しき男の子の時の彼と、レストランでジャケットを着こなすセクシーな彼、ドライブテクニックでアドレナリン放出中の彼、と三パターンの切り替えがたまらなくカッコいい。

こりゃ一度しかデートしてない彼女も死ぬ気でメロメロになるわ、と現実的に考えて一見無茶な設定にも無理やり納得させられる(笑

 

評判では「カーチェイス版ララランド」と言われているそうだけど、
それはイマイチしっくりこない。

純愛ではあったけれど、すれ違いとかじれったさとかは一切なかったし。

 

それよりも「キングスマン」の爽快さとテンポのよさ、物語の進行と共に魅力が増していく主人公のかっこよさ、
「俺たちに明日はない」のさらっとしたかっこいい悪さと切なさ(オマージュシーンもあったことだし)、
それに音楽をバリバリ足したようなイメージのほうが近いと思う。

 

まさに映画らしい映画。

映画館でみたほうがいいすっきり爽快な映画。

 

強引なまとめ方も、いい奴かよ!とツッコみたくなる悪役も、
細かいことはみんなどうでもよくなるくらい爽快で、
飽きたなー、とか、まだ終わらないのかなーという間延びした瞬間が一瞬たりとも訪れなかった。動き続ける展開には常にハラハラさせられまくりで、かといってストーリーに置いてきぼりになることもない。

 

そしてやはりクイーンファンの私として外せないのは、
盛り上がるシーンで流れるブライトン・ロック。

 

クイーンのサードアルバム一発目に収録されているこの作品を選ぶなんて、
監督さん、なんてセンスいいのかしら、と感動した。

(監督デビュー作の「ショーンオブザデッド」というコメディゾンビ映画でも、大量のゾンビと戦うシーンでドントストップミーナウがかかったので、めちゃくちゃクイーンファンなんだろうなー)

あとは個人的に警官から逃げるシーンで流れるFocusの「HocusPocus」が好き。
今まではふざけた歌だなー、と思っていたのに、疾走するシーンに流れることによってほどよい焦りと絶望感を観客に味あわせる効果があった。かっこよかった。
選曲に心を完全に掴まれた。脱帽です。

 

こんなにテンションが上がる映画は久々だった。

 

ボニー&クライドには来なかった明日が、彼らにはある。
明るく描かれた未来の姿は観客を笑顔にするだろう。

 

観終わった後、たまらなく音楽が聴きたくなる。それも、爆音で。