小説

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 立ち上がりながら隣の様子を横目で確認して、私はのんびりと帰りの支度をはじめた。

何度もデスクを整頓し、ポーチや手帳をかばんに仕舞い、忘れ物がないか、引き出しの中までしつこく確かめる。

仕事はあれほどテキパキし ...

小説

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 行儀悪く新聞紙を片手に開きながら、もう一方の手で食べようとして失敗した。
新聞に目を落としたまま、口を開けた間抜けな姿で、一瞬の間、時が止まった。

朝は少し早めに家を出て会社近くのカフェに立ち寄り、こうしてニュー ...

小説

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 何故この家はこんなに寒々しく、恐ろしいのだろう。

子供時代から厭だった場所である。しかしもういい加減、十五年も経っているのだから平気だろうと思っていた。
やはり駄目だったようだ。むしろ年月を経て、より不快さが増し ...

オリジナル作品, 小説

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ハロペリドール、デスパ、ハルシオン。
呪文みたい、と思いながら白い紙袋を開け、名前をいちいち口に出して手のひらにのせる。
粒の量を目で追って確認する。

いち、に、さん。

よし、だいじょうぶ。 ...

小説

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あぁ、膝小僧に水が溜まっちまったと昔の芸者風に忌々しく云うのは、今居る中では一番の年輩である小暮花。
畳の敷かれた控室でスカートを捲し上げて膝を立て、ジャガイモみたいな骨っぽい膝小僧を大事そうに撫でている。

「花さ ...